10円玉

"これは私がまだ小学校へ入る前の事です。昭和30年代の終わり頃の話ですね。

うちは貧乏だったのです。田舎で近所にお店もありませんでしたから、街から移動販売車が来て野菜、肉、魚、お菓子などを売っていました。

移動販売が来るたびに私は母にせがんでお小遣いをもらってお菓子を買おうとしましたが、母はお金をくれませんでした。それでも月に一度くらいは10円玉をひとつくれることがありました。10円で買える駄菓子もあったのです。

ある時貰った10円玉をもって販売車の所へ行ってお菓子を買おうと思ったら持っていたはずの10円玉がないのです。

泣きながら家に帰った私を連れて、母は家から販売車の来る公民館までの道を一生懸命に10円玉を探して歩きました。3往復ぐらいしても、結局は見つかりませんでした。

家から公民館までは2キロぐらいあるのです。それを3往復。

うちは貧乏だったのです。"

お金のコラム